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トピックストップ | 花粉症について薬剤師的に考える
 
 

私には花粉症の経験もなく、その辛さもわかりませんが、春に花粉症になった経験のある全国の20〜39歳の男女620人を対象に実施した意識調査の結果によると、花粉症による1ヶ月に受ける精神的な負担を金額で表した場合、「0円以上1万円未満」とする人が全体の36.6%、「1万円以上5万円未満」が33.1%、「10万円以上」も14.4%に上ったという驚く数字が公表されました。

この意識調査は平成22年1月、グラクソ・スミスクラインがインターネット上で実施した実施したものです。調査結果によると、「1,000円以上5,000円未満」で37.1%、ついで「0円」で19.0%、「1円以上1,000円未満」が18.2%、「5,000円以上1万円未満」が15.6%などだったといいます。

何に使ったかについては「1円以上1,000円未満」では、主にマスク代や目薬代に費やし、「1,000円以上5,000円未満」では、マスク・目薬以外に薬代などの治療費に充てられていた。さらに「1万円以上」になると、空気清浄機を購入した人や、鼻の粘膜を焼くレーザー治療を受けた人などがいたといいます。

スギのような木は広い山に散在する相手と受粉させるため、遠方まで届く花粉を空気中に放出させます。一方、スミレやレンゲのようにミツバチに花粉を運んでもらう戦略をとる植物は、花粉を大量に空気中に飛散させません。

花粉症は、おおよそ1月下旬から5月下旬までのスギ、ヒノキ、マツなどの花粉が主体です。北海道では5月にピークを迎えるシラカンバも有名です。3月初旬から10月までは、カモガヤ、ハルガヤなどのイネ科の植物の花粉が飛散します。その後、8月から10月はブタクサ、ヨモギ、イラクサの花粉が舞います。つまり、11月から1月までを除いて、何らかの花粉が飛散しているのです。
楽になる時期が少ない、通年の花粉症というかわいそうな方もいらっしゃるようです。

私たちの体には自分の物質(自己)と自分ではない物質(非自己、異物)を厳密に見分ける仕組みが備わっています。自分の体の細胞ではない、非自己の細菌やウイルス、他の生き物が私たちの体の中で増殖していったら大変ですし、困ります。

異物である花粉を追い出そうとする反応が、過敏に起きてしまったものが花粉症です。最近、潰瘍性大腸炎、クローン病といった炎症性腸疾患という病気が増えてきているという話を耳にしました。私たちはある程度の許容範囲をもって、腸内細菌が腸で繁殖することを許しています。炎症性腸疾患では、この許容範囲が狭くなり腸が炎症を起こしてしまうといわれています。これも、体を守るためのシステムが過剰になると、良くない症状が現れるということなのでしょう。

自己(味方)・非自己(敵)の認識は、白血球の中のリンパ球という細胞が担っています。リンパ球同士はサイトカインというもので連絡を取り合い、敵に対する準備を進めます。最終的にこれらの細胞はヒスタミンという物質を放出し、鼻水、涙、くしゃみ、鼻や目の粘膜のむくみ、咳などを起こします。外からやってきた敵である花粉を何とか外に追い出したり、流し去ってしまおうとする反応が起きるわけです。皮膚で、放出されたヒスタミンによる反応が起きると、発疹とかゆみを伴う蕁麻疹になるのです。

ヒスタミンの受容体のうち、H1受容体が炎症やアレルギー反応に関わっています。胃酸分泌にはH2受容体が関わっていて、それぞれ創薬につながりました。

H3受容体は脳のヒスタミン神経系というシステムに重要な役割を果たしています。ヒスタミン神経系は、意識をクリアにして目を覚まさせる働きや、めまいや吐き気に関わっています。

乗り物酔いにトラベルミンというお薬があります。旅行、トラベルから連想されるネーミングです。トラベルミンは抗ヒスタミン薬であるサリチル酸ジフェンヒドラミンという薬とジプロフィリンという喘息の薬が配合されている薬剤です。この2種類の薬剤を一緒に飲むと、アメリカの海兵隊の兵隊の船酔いが減ることが発見され、今でもそのまま乗り物酔いの薬として使われているのです。

最近薬局で購入できるようになった睡眠薬に「ドリエル」という薬がありますが、この薬剤は睡眠薬ではなく脳にも働いてしまう抗ヒスタミン薬です。抗ヒスタミン薬の「副作用」として眠くなるため、睡眠導入薬として用いられています。医療機関で処方される「マイスリー」や「レンドルミン」、「ハルシオン」といった睡眠薬とは異なる系統の薬剤で、マイルドな働きです。しかし、前立腺肥大症の患者さんや緑内障の患者さんには別の副作用が心配されますので、薬局の薬剤師に相談の上、ご使用ください。

花粉症の薬を創約するときには、このヒスタミン神経系への鎮静作用をどれだけ少なくし、目や鼻のH1受容体にどれだけ選択性を高めることが出来るかが大切な要素となります。第2世代の抗ヒスタミン薬といわれる「ザジテン」、「アゼプチン」は最近パブロンやハイガードという薬局で変えるお薬(スイッチOTC薬)となりましたが、まだ眠気が出やすい薬です。

その後、H1受容体への選択性をさらに高めた薬剤である「セルテクト」が1980年代に、「レミカット」、「アレジオン」、「ジルテック」、「クラリチン」が1990年代に、「タリオン」、「アレグラ」、「アレロック」が2000年代に登場しました。
「風邪が2週間も治らなくて鼻水や咳が止まらない」と訴える患者さんには、アレルギー性の鼻炎や咳喘息であることも多く、こうした薬剤がよく効くようです。ところが、どんな抗アレルギー薬を内服してもなかなか効果の出ない人もいます。ヒスタミンの働きだけをブロックしても症状の改善が少ないときには、次の手を考えなければなりません。

アレルギー担当の細胞同士は、サイトカインという物質などで互いに連絡を取り合いながらアレルギー反応を調節しています。アレルギー反応は小さなきっかけにより、リンパ球のやりとりを介するネズミ算的な連鎖反応で大きな症状が出てきます。アレルギー反応を下支えしているこの白血球(リンパ球)のやりとりをブロックする薬剤も開発されています。

なんと、活性化したリンパ球たちは、鼻や目、気管といったアレルギー反応を起こしている現場にもぐり込み、この悪循環を起こすことも知られています。その場でサイトカインが作られ、ヒスタミンの放出が行われるようになります。

こういったリンパ球の受け皿やサイトカインを介したアレルギーの仕組みは1990年代に研究が進みました。リンパ球同士のやりとりをブロックする薬剤として、「バイナス」が開発されました。また、サイトカインの一種であるロイコトリエンという働きを抑える作用を持つ「シングレア」、「オノン」という薬剤も開発されました。

大鵬薬品が開発した「アイピーディ」は、リンパ球の表面の情報の受け皿を邪魔するのではなく、リンパ球がお互いに情報をやりとりする物質の放出自体を抑える薬剤です。

医療機関の臨床現場では、抗ヒスタミン薬から派生した抗アレルギー薬と、リンパ球の活性化を押さえる抗サイトカイン薬を、うまく組み合わせて花粉症の治療をしていきます。

1ヶ月に1回注射をすれば、花粉症は1年間大丈夫」という話を耳にしたことがあります。

多くは「ケナコルト」という副腎皮質ステロイド薬です。ステロイドはアレルギー担当細胞だけでなく、体中の細胞に働き、効果を発揮します。アレルギーだけを選択的に抑えるというエレガントさはありません。

副腎皮質ステロイド薬は、細菌やウイルス、そしてガン細胞をやっつけるのに大事な役割も果たしている白血球や免疫のシステム全体をも抑えてしまいます。私は、このようなステロイドの筋肉注射は問題が大きいと考えていますし、実際多くの医師からも警鐘が鳴らされています。筋肉注射したホルモンが体の中で性ホルモンの周期を乱し、生理が遅れたり止まったりしてしまった女性もいらっしゃいました。彼女は、内容もまったく理解せず、毎年のように花粉症の時期になると注射を行っていたというのです。

ステロイドの使用は、メリットがデメリットを上回るときに用いるべき薬剤であると思います。おいそれと注射するのは控えて、医師にそういったことをいろいろ尋ねて、十分に納得した上で行うようにしましょう。

花粉症の薬は、目や鼻に作動するヒスタミンの働きを抑えたり、アレルギーの連鎖反応を断ち切るものです。医師や薬剤師に相談の上、正しく使用して、花粉症の時期を乗り越えていただきたいと願っています。

 
 
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